成人のおよそ9割がその予備軍ともいわれている歯周病。
その歯周病は近年、
糖尿病や心臓疾患、脳卒中といった全身の病気にも
影響を及ぼすことが明らかになってきています。
歯ぐきの健康は、今や体の健康維持にとっても大切な要素なのです。
歯周病は歯周病菌が歯ぐきに感染することでおこる病気で、進行すると歯ぐきの下にあるセメント質、歯根膜(しこんまく)という組織を壊しはじめます。
そして歯周病はさらに進行すると、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)を破壊し、最終的には歯を維持できないほど骨が失われてしまう病気です。
歯科の2大疾患である「虫歯」と「歯周病」は、歯を失う原因のおよそ7割を占めています。そのうち4割が歯周病であり、歯周病は抜歯原因の第一位に挙げられています。
歯周病は病状が進行しないと痛みや腫れといった強い症状があらわれないため、発見が遅れやすい病気でもあります。
したがって歯ぐきの出血や違和感といった小さなサインを見逃さず早めに対処すること、定期的に歯周病の検査を受けることが、歯周病予防ではとても大切です。
細菌の感染によって引き起こされる歯周病は、体の免疫力とも深い関係にあります。乱れた食生活や睡眠不足、ストレスの蓄積などは体の免疫力を低下させてしまうため、歯周病の進行を早めてしまう要因となります。
また歯周病の大敵といえるのが喫煙です。喫煙は歯ぐきの抵抗力を弱めるため、歯周病が重症化しやすくなります。また喫煙は歯ぐきの再生能力にもダメージを与えてしまうため、歯周病治療の効果を低下させてしまいます。
以上のことから歯周病は「生活習慣病」としても位置付けられており、歯周病の予防・改善のためには
など、これまでの生活習慣を見直していくことが非常に重要です。
近年歯周病はお口の問題にとどまらず、全身にもさまざまな影響を及ぼすことが明らかになっています。
例えば血管内に入り込んだ歯周病菌は動脈硬化を悪化させるため、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めてしまうことがわかっています。
また歯周病菌の感染によって生産される炎症物質には、血糖値をコントロールするインスリンの働きを妨げてしまうものがあります。そのため歯周病は糖尿病を悪化させるほか、メタボリックシンドロームとの関連も指摘されはじめています。
さらに妊娠中の方の場合、歯周病が早産や低体重児出産を招くおそれがあるため注意が必要です。
歯槽骨の状態を確認しながら、歯周病の進行具合をチェックしていきます。
必要に応じて顕微鏡も使用し、歯周病菌を確認していきます。
歯周病が進行すると、歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」というすき間が生じます。この歯周ポケットは歯周病が悪化するほど深くなるため、歯周病の病状を知る1つの目安になります。
検査ではプローブと呼ばれる目もりのついた器具を歯周ポケットに挿入し、その深さを測定していきます。
ピンセットを使って、歯にグラグラとした揺れがないかを1本ずつ調べていきます。
歯周病を悪化させるような咬み合わせがないか、詳しくチェックしていきます。
歯周病を改善するためには、まずお口の中の歯周病菌をできるかぎり減らしていくことが大切です。
歯周基本治療では、歯周病菌のすみかとなるプラークや歯石を徹底的に取り除いていきます。
日々のホームケアでしっかり汚れを落としていけるよう、歯ブラシの選び方や歯磨きの方法、デンタルフロス、歯間ブラシの使用法などを指導していきます。
歯磨きだけでは落とせない細かい部分の汚れや歯石などを、専用の機械や器具を使って落としていきます。
歯周ポケット内にある歯石を、キュレットと呼ばれる器具で1本1本丁寧に落としていきます。また歯の表面をなめらかに仕上げることで、汚れの再付着を防いでいきます。
歯周ポケットにレーザーを当てることで、歯周病の原因となる細菌を減らしていくという治療方法です。治療部位以外が傷つきにくいので、体に優しい治療です。
歯周病治療では基本治療が一通り終了した段階で、再度歯周病検査をおこないます。
そして基本治療のみでは改善がみられない部位に対しては、次のステップである歯周外科治療をおこなう場合があります。
歯周病が進行し、歯周ポケットが深くなるとSRPだけでは汚れを落とすことが困難です。そこで歯ぐきの一部を切開して、取りきれない汚れを取り除くフラップ手術をおこないます。
歯周病によって歯槽骨(歯を支える骨)が大きく破壊された部位に対し、新しい骨の再生をうながしていくのがエムドゲインと呼ばれる歯周再生療法です。
フラップ手術と同様に歯ぐきを切開し、感染物質をすべて取り除いたあと、組織再生誘導剤のエムドゲインゲルを塗布していきます。適用できる症例に限りがあるため、詳しくは担当医にご相談ください。